She reads.

てすと

冬の冷たい空気が好きな人

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雨が降る日、僕はこれまで幾度となく訪れた雨の日を想う。

 

 

授業中、降り始めた雨の音が教室に響く。

同じ黒板を見つめ座る生徒たちの並びの奥に、どんよりとした灰色の空が窓に映る。

少し肌寒くなった教室で、そこに並び座る自分の体が輪郭を表す。

 

 

教室の窓、校舎の隅々に雨は弾け、見えなかったあらゆる物質の存在を知らせる。

 

 

透明人間に水をかけると浮き出る輪郭みたいに、無色透明な世界が、雨に打たれガラス細工のように形を持つようになる。

 

雨の匂い、体と大気が触れる。

吸い込むひんやりとした風が、肺を巡る。

 

胸は澄み切った空気でいっぱいになり、細胞の1つ1つが生き返るように身体中へと幸福感が連動する。

 

 

時に雨は、地上を攻撃するように襲いかかった。

あなたが運転する車の助手席で、バンパーに打ち付ける無数の雨粒。

上や横から無数に弾ける雨の音は、車内を優しく包む音楽となり、そしてやはりひんやりと冷たい空気が身体中に巡った。

 

楽しみにしていたイベントの日に、雨が降ることも多かった。

 

雨に負けないようにと、みんな冷静に楽しさを持ち寄って、悪天候を乗り切る。

 

雨足は少しずつ弱まり、後片付けをしているガランとした場所に出来た水溜りが、夕陽に照らされてキラキラと銀色に輝く。

 

さっきまでの雨は無かったように、みんなの顔が喜びに包まれる。