She reads.

てすと

ノイローゼ診断【冬の終わり型

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帰り道、いつもの改札口を通る。

路線の1番端っこの駅から乗るので、止まった電車に沿ってホームをゆっくり歩きながら、一両目の車両に乗り込んだ。

 

運転席に1番近い席に座ったのは自分だけで、車内にも数える程しか人は座っていない。電車は静かに、時間ぴったりに駅を発った。

 

いつもなら、電車に乗るとSNSを見たりブログを読んだりするのだけれど、今日はそんな気になれず、ただボーッと色々と観察した。

 

電車を操作する車掌さんの背中と、窓に反射した自分を交互に見る。

意車内広告は、新しく発売されたお茶の広告に全てジャックされていて、お茶を片手に持った女性の顔が至る所にあるのがおかしかった。

 

電車は、小さな駅を速度を落とすことなく通り過ぎていく。

 

窓から見える高層ビルが、沈んでいく太陽の光で逆光になり、半分を真っ黒に、もう半分を紫色に染める。

なんの趣も風情も無い街並みに、太陽が傾くだけで、すごく美しいと思える。

グレーの無機質な建物を、淡い紫色やオレンジ色のグラデーションが優しく包んでいた。

 

 

 

橋の上を走り出した電車の窓から、大きな川が見えた。

その先に見える海の水平線の少し上に、真っ赤な太陽が光っている。冬の終わりを告げるかのように太陽は本当に綺麗な赤色だった。

これなら、子供が真っ赤な太陽を描くのを誰も否定できないなぁ。そんなことを考えた。

大地を切り裂いたみたいに出来たその水の亀裂に、光が反射してシルバー色の光が輝いている。

 

空は、赤オレンジ黄色のグラデーションが太陽の周りから生まれ、その上に不自然に青や紺色のグラデーションが続いた。窓に映る全てのものが、赤い太陽の光に照らされて見慣れない景色になっていて、その全てが美しいと思えた。

 

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窓から見える街に吸い寄せられるみたいにじっと見る。

 

太陽の優しいオレンジ色に照らされながら、自分でもよく分からない感情がグルグルと体を包む。

 

 

美しいものに飢えているだなぁ、俺。。。としっかり自覚してノイローゼ診断を受け入れる。

 

 

合理化されたレストランや計算された広告。

 

誰かの視線だけを考えて写真を撮り、それをネットに張りだすこと。

 

他人の小さな悪を、ヒステリックに思えるほど締め上げるニュース。

 

 

 

簡単で、合理化されて、分かりやすいあれこれ。

 

悪いことばかりではないけれど、それらは気づかないうちに発病する癌みたいに、俺の日常を結構ギリギリのところまで追い込んでいた。

 

 

生活も安定して、日常の中には楽しさや情報が溢れ、欲しいものも全て揃えることのできる余裕もできた。けれども心はずっとどこかフワフワとしていて、大切なものを無くした子供みたいに、悲しさと諦めを隠しきれずにいる。

 

最近ずっとそんな日々が続いている。

 

 

真っ赤に光る太陽、その美しさに目を奪われたのは、その中に何かを見つけようとしたのかもしれない。